引き続き、Gear PatrolのAndrew Connor氏によるスズキ・ジムニーのエッセイ調レビューです。
※「Gear Patrol」とはアメリカ・ニューヨークに拠点を置き、2007年から出版社やスタジオとしてオート関係の情報を発信している会社。
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ジムニーの存在目的
しかしもう一度言うが、これらのことは、ジムニーを運転する上では全て取るに足らない、つまらない詳細なのだ。
汎用性や乗り心地、カーステレオのクオリティ、そんな事はジムニーの本質に全く関係ない。
想像できるだろうか?
ジムニーを運転するあなたの目の前に、大きな岩や深い溝でボコボコの急坂が立ちふさがる。
あなたはギアを4WD-Lに切り替え、シフターを初速に入れる。
するとその小さなエンジンはフル回転し、ジムニーはまるで地を這うようにゆっくりとその急坂を登っていく。
その視界の良さのおかげで途中溝に足を取られることもなく、逞しく(たくましく)も坂を登りきると、頂上にはまさに絶景と呼ぶにふさわしい、この世のものとは思えない美しさの太平洋があなたを待っているのだ。
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自分は誰なのかを考えさせる車
ジムニーに出会う約1年前、筆者はよく2,000万円のレンジローバー・Autobiographyを借り全く舗装されていない、道なき道をひたすら進むドライブを楽しんでいた。
しかし現実にほぼ全てのオフロード走行のための操作を実行・制御していたのは運転手である筆者ではなく、Autobiographyであったのだ。
ジムニーを運転し前述の経験をして感じたのは、Autobiographyなら似たような坂を運転手自身による操作など全く必要とせずに易々と登りきるだろう、ということだった。
その時、筆者は自分自身の存在意義について、疑問を抱かざるを得なかった。
”オフロード走行”を実際にしているのは他ならぬ車自身であり、運転手である筆者は不完全で、夢見がちで、臆病で、欠点だらけの、ただの肉袋に過ぎないのではないか。
そしてそこであることに気づいた。
不完全なのは何も筆者だけではない、このジムニーもまた、完璧な車とは程遠い存在だということに。
たとえその車高の高さと足回りの可動性をもってしても、ジムニーにとって、そして筆者自身にとっても、坂を上るというのは忍耐力、スキル、そして実際の労働が要求されることなのだ。
最新のオフロード装備を余すことなく搭載したオフロード車でジムニーと通った癖の強い悪路を運転することがあったとしても、スリルや自分自身の生命活動をこんなに強く感じることは決してないだろう。
後編へ続く
【米誌GearPatrol】ジムニーのオフロードレビュー後編
オリジナル記事(記事内画像ソース):The Suzuki Jimny Is the Best Bad Car I’ve Ever Driven (2018)
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