Gear PatrolのAndrew Connor氏によるスズキ・ジムニーのエッセイ調レビューです。
ジムニーでのオフロード走行を経て自分自身を見つめ直したConnor氏の経験談を日本語訳でお届けしたいと思います。
※「Gear Patrol」とはアメリカ・ニューヨークに拠点を置き、2007年から出版社やスタジオとしてオート関係の情報を発信している会社。
スズキ・ジムニー
この際はっきり言ってしまおう、スズキ・ジムニーは決していい車ではない。
加速度、最高時速、内装、乗り心地、運転性、ブレーキ、もはや何もかもダメ。
時速100kmに達するのに14秒もかかるし、最高時速はたったの140km、止まるときはブレーキを思っきり踏み込む必要があって、しかも揺れるし、ガタつくし、軋む(きしむ)。
しかし、こういったことは、実際には全てどうでもいいことなのだ。
実際に低スペックの粗悪車に”欠点があるだけの良い車”などという甘い評価を下すのは、もはやカーレビューというものが世に出てきて以来のお約束といっても過言ではない。
その裏にあるのはおそらく、近代社会において著しく進歩した技術がごく一般的な”車”という乗り物を劇的に変えてしまったという事実だろう。
そんなハイテク化した近代の車に、シンプルイズベストの観点から一言物申そうという意見があるのは想像するに容易い。
それがオフロード車愛好家ならなおのことである。
激しい戦火の中を戦い抜き現代社会を築き上げ、未開だった世界を切り開いたのは、シンプルで最低限の装備しか持たない昔ながらのオフローダーなのだ。
ジムニーはまさにそのオフローダーの一つであり、それは現在でも変わっていない。
【英誌TopGear】第4世代ジムニー、2019年EUでの評判はいかに?
伝説のLJ10
その発表は1970年に遡る。
LJ10と呼ばれたそのモデルは、最大乗車定員3名(本来4つ目の座席であるべきスペースをスペアタイヤが占領していたため)、最大排気量359cc・空冷式2シリンダーエンジンの小さなコンバーチブルだった。
これだけ聞いたところで、まさかジムニーがワールドクラスのオフローダーだなどとは到底想像がつかないことだろう。
しかしその小さなボディと敏捷(びんしょう【動きが素早いこと】)なシャーシにより、他の大型オフローダーでは入り込めないような狭い場所でもジムニーなら進むことが可能だった。
それから数年のうちにスズキはハードトップで馬力も向上されたジムニーのピックアップトラックモデルを発表、そしてそのモデルはオーストラリア、アフリカ、中東、東南アジアでたちまち作業用車のスターの座に上り詰めた。
その後モデルチェンジが2回行われ、1981年には第2世代であるSJ(米国ではSamraiの名で販売)、1998年には第3世代であるJBが発表された。
ジムニーの人気は国内だけじゃない!アメリカでも再販を希望する声は多い!
現在、ジムニーの時間は第3世代モデルが発表された1998年で止まってしまっている。
20年前に発売が開始された、第1世代との違いは実はそんなにないことにはこの際言及しない。
コスタリカで1週間レンタルしたジムニーは手回し式のロールアップウィンドウだった。
シートにはいかにも98年という柄の生地、ヘッドユニットに至ってはAutozoneの在庫処分品かと思わせるような見た目と使い勝手である。
上位グレードのジムニーを選べば内装も多少マシになるのかもしれない。
もちろん、その分の差額を喜んで払う気があるならばの話だが。
中編へ続く
【米誌GearPatrol】ジムニーのオフロードレビュー中編
オリジナル記事(記事内画像ソース):The Suzuki Jimny Is the Best Bad Car I’ve Ever Driven (2018)
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